北海道浦河町出身で現在73歳の浦川治造さん。
当時わずかに残っていたアイヌ集落で生まれ、日々の暮らしを通して父親からアイヌの伝統的な知恵や技術、自然との共存を大切にする「アイヌプリ(アイヌらしい生き方)」を教えられ、過ごしてきました。
生活のために40代で上京した後も強靭な体力と精神力を武器に働き、その一方で日常的に「アイヌプリ」を続けてきたのです。
治造さんのまわりにはいつも大勢の仲間がいます。
彼らに話を聴くと治造さんの様々な素顔が見えてきます。
次女の正美さんは子供の頃を思い出し「寂しかった。家にはあまりいない人だった」と、当時の父親への想いを話してくれました。
長女の真喜子さんから見た治造さんは「会うたびに新しいことを言っている」人です。
「アイヌ文化を語るとき、知識とか気取りに入ることが多いが、治造さんは違う」と語るのはアーティストの結城幸司さん。治造さんのことを「飾らない、正直な人」だと言います。
治造さんの20年来の親友、橘守さんは自分の方が年上なのに、治造さんを「親父」と呼んでいます。
俳優の内野智さんからは「大きい鹿を一日に二頭捕ったことがあるらしい。飲みにいくといつも自慢する」というエピソードが飛び出しました。
そして、治造さんがよく口にする大切な言葉を教えてくれました。「『心に畑を持て』と言うんだけど、『自分の心を耕せ、畑で作ったものを人にも与えられるような人間になれ』と言う事なんじゃないかと思う。」
治造さんはこれからも「心の畑」を耕し続けます。人のこと・自然のことを想って、未来を見つめながら。